ある夜、夫の些細な一言で涙が止まらなくなりました。ワンオペ育児、すれ違う会話、家庭内での孤独感…。20年以上溜め込んだ辛い記憶。そんな私が、ある「趣味」をきっかけに自分を取り戻した実体験を綴ります。今、孤独で泣いているあなたへ。
ある日の夜、食器を洗いながら、ふと夫の言葉を思い出したら、突然涙が止まらなくなりました。
「食器ぐらい洗ってくれてもいいじゃない!台所をキレイにしても、いつの間にか食器やコップが溜まってる。誰が使ってるの?」
そう訴える私に、夫は悪びれもせずこう言ったのです。
「食器洗いはハードルが高いから…」
その一言が引き金でした。心の奥底にしまい込んでいた20年分の記憶が、濁流のように溢れ出してきたのです。
この記事は、家庭の中で孤独を感じ、自分を見失いそうになっている、かつての私と同じようなあなたのために書いています。

忘れられない。私が「孤独」を刻みつけられた3つの記憶
ほかにもあります。
長女がまだ1歳にもならない頃。夫が早く帰ってきた日、「今日こそは一人でゆっくりお風呂に入りたい」とお願いし、娘を任せてお風呂場へ向かいました。
シャワーの音に混じって、微かに聞こえる泣き声。気のせいだと思いたかった。
でも胸騒ぎがして、コンディショナーも付けず、タオル一枚でリビングにいる娘のもとに行くと、案の定、娘は顔を真っ赤にしてギャン泣きしていました。
そして夫は…自分の部屋の扉を閉め、ゲーム機の将棋に没頭していたのです。
「見ててって言ったでしょ!」
気づけば私は叫んでいました。
裸のまま娘を抱きしめ、涙を拭き、おっぱいを飲ませる。
その間、夫からの言葉は何もありませんでした。
せめて「ごめん」の一言や、タオルを一枚かけてくれる優しさがあれば、私の心は少しは救われたのかもしれません。
また、二番目の長男が小1の時、私の財布から黙ってお金を抜き取り、ポケモンカードを買っていたことがありました。
しかも、夫はその事実を知りながら、私には何も言わず、息子と「二人だけの秘密」にしていたのです。
その頃から、なぜか息子は私に懐かなくなりました。
夫は息子の味方になったつもりだったのでしょう。
でも、それは家族の中に分断と不信感を生んだだけ。
父親として、夫として、一番大切な「家族の信頼」を自ら壊してしまったのです。
いつからか(もしかしたら、新婚当初からなかったのかも…)、夫との間に他愛もない会話はなくなりました。
「これお願い」
「あれやっといて」
「それじゃダメだろ」
これらは夫のことば。
私を一人の人間としてではなく、便利な家政婦か何かのように扱う言葉だけ。
子供たちの手前、「良い父親」を演じさせるために、私から必死に話しかけ、イベントを企画し、矢面に立ってきました。
今思えば、心はこのころから限界だったのかもしれません。

号泣する私を見て見ぬふり。それが「孤独」の正体だった
そんなことから20年近くたち、子育てにもひと段落ついた頃、ふと過去の最悪な記憶が顔を出し、そして涙が出てくる。
そんな一人で号泣している私を、夫は見ていたようです。
そして、私の知らないところで、子供たちに「お母さん泣いてたけど、どうして?」ときいたそうです。
これは後日、長女から聞き、さらにあきれ、情けなく、マジむかつきました。
おそらく、彼の信条は「触らぬ神に祟りなし」面倒なことには関わらず、ただ傍観しているのが一番被害が少ない、そう思って子供たちに聴いたのでしょう。
同じ家に住みながら、心の距離は宇宙よりも遠く、この無視される感覚こそが、私の心を蝕む「孤独」の正体でした。

涙の夜を終わらせたのは、一通の怪しいDMだった
私には、ささやかな日課がありました。
それは、15年以上続けている夕飯や、夫のお弁当の写真をSNSにアップすること。子供たちが大人と同じものを食べられるようになった頃からの、私の小さな歴史です。
続けるうちに、時々あやしげなDMが届くようになりました。
「この料理はどこのレストランですか?」
「あなたはプロのシェフですか?」
もちろん、送り主のアカウントをチェックし、怪しげな物は即ブロック。でも、その日は何かが違いました。心が弱っていたからか、何かにすがりたかったのか…。魔が差したとしか言えません。
私は、その怪しいDMに返信してしまったのです。
私とLINEしたのは「シンガポールのCEO」…のはずが?
気づけば、LINEまで交換していました。相手はシンガポール在住の企業のCEO(自称)。コロナで事業が傾き、従業員のために私財を投げ打った悲劇の経営者…という設定でした。元妻である副社長に猛反対され、離婚したという切ないストーリー付きで。
職場での昼食や、なぜか上半身裸の写真まで送られてきます。
(はい、もうお分かりですね。ほぼ100%「国際ロマンス詐欺」です。)
でも、もう夫のことで心をすり減らすのに疲れていた私は、この奇妙なやり取りに、ある種の刺激を感じていました。そして、ある探求心が芽生えたのです。
「この人の正体、突き止めてみよう」と。
画像検索が暴いた真実!CEOの正体は…
私は、送られてくる写真を片っ端から画像検索にかけました。すると、案の定、写真はほぼすべてネットの拾い物。そして、ついに彼の顔写真から、とあるX(旧Twitter)のアカウントにたどり着いたのです。
そこにいたのは、シンガポールの悲劇のCEOではありませんでした。
なんと、「中国のゲイ専門マッサージ師」だったのです!
あまりのことに、衝撃と同時に笑いがこみ上げてきました。今まで見たことも聞いたこともない世界。詐欺に遭いかけているのに、不謹慎ながら「なんだか面白い!」と感じてしまったのです。

アルゴリズムが導いた新世界。私の心はこうして軽くなった
この一件以来、私のXのタイムラインは一変しました。
- まず、中国のゲイの皆さんの投稿がズラリ。(かなり露骨な印象…)
- しばらくすると、日本のゲイの皆さんの投稿がズラリ。(ほんわかしていて優しい印象。心に沁みる投稿も)
- さらに放置すると、なぜか日本の「裏垢男子」の投稿がズラリ…!
「私のアルゴリズムってこうなってるんだ!」
「こんなに自分のことをさらけ出していいんだ!」
それは、小さなコミュニティの中で息を潜めて生きてきた私にとって、カルチャーショックでした。彼らは自分のセクシュアリティや日常を、時に悩み、時に明るくオープンに発信していました。その姿を見て、私はふと思ったのです。
夫の知らない世界を、私は、見てしまった。
それは、ほんの少しの「優越感」だったのかもしれません。
家と職場の往復だけで、自分の小さな価値観が世界の全てだと思っている夫。その隣で、私は今、彼の想像もつかないような、広くて、複雑で、そして面白い世界に、指先一本だけでも触れている。
そう思った瞬間、今まで私の心を支配していた、夫への怒りや恨みが、スッと色褪せていくのを感じました。
まだ、夫の過去の言動を、完全に許せたわけではありません。
でも、不思議なことに、何かにつけて過去の言葉を思い出しては憂鬱になるということが、確実に少なくなっていきました。
夫の「食器洗いはハードルが高い」という、あの呪いのような言葉も、今ではあまり思い出すこともなくなりました。
私の意識が、夫という小さな存在に向かうのではなく、もっと広くて面白い「外の世界」へと向き始めたからなのかもしれません。
ロマンス詐欺という危険な体験でしたが、皮肉にもそれが、私の心を縛り付けていた鎖を、静かに解き放ってくれたのでした。

【まとめ】今、孤独で泣いているあなたへ。世界はあなたが思うより、ずっと広い。
この記事を読んで、「なんだこの人」と笑ってくれたなら嬉しいです。
夫や家族を変えることは難しい。でも、自分が見る世界を変えることはできます。 私の場合は、それがたまたま怪しいDMとSNSのアルゴリズムでした。
もし今、あなたが家庭の中で孤独を感じ、涙を流しているなら、ほんの少しだけ顔を上げてみてください。あなたの知らない世界、あなたの悩みを「ちっぽけだ」と笑い飛ばしてくれるような世界が、すぐそこに広がっているかもしれません。
スマホ一つで、すべてではないけど、世界を見ることができるし、繋がれます。
あなたが笑顔になれる場所は、家の中だけじゃない。
この記事が、あなたの涙の夜を終わらせる、ちょっと変わったきっかけになることを心から願っています。